ラベンダーと星空の約束
知りたい事が沢山あった。
あの白黒写真の撮影に使用したカメラの機種や、技術的な事から聞いてみた。
「ほー、君はカメラ女子かぁ。
成る程ね〜、通りで僕の写真を、食いついて見てくれた訳だ」
私の若干マニアックな質問を、我妻さんは面倒臭がらずに答えてくれた。
驚いた事があった。
展示されていた白黒写真はプロスペック機と言える様な…
本格的なカメラを使っているのだと思っていたけど、
意外にもさっき私達を写した、どこの電器店でも見かけるカメラで撮影したとの事だった。
そのカメラを見せて貰うと、
“キャノンのEOS-×××”
私が愛用している一眼レフカメラよりも旧型の中級機。
そうか…
要は腕次第なんだね…
あの白黒写真は光のバランスも構図も素晴らしかった。
人物も自然体で、表情豊かに表現されていた。
カメラの性能じゃなく…
技術と我妻さんの人柄が、あんなに素敵な写真に仕上げたと言う事みたい。
「私も我妻さんみたいな綺麗で温かみのある写真を撮りたいです。
プロにこんな事言うのは失礼かも知れないけど…」
「プロじゃない、アマチュアに毛が生えた様なもんなんだ。ワハハハ!」
アマチュアと聞いてまた驚いた。
確かに今まで『我妻ミチロウ』という名前を聞いた事は無かった。
だけど、あの作品は彼らしさと言うか…スタイルが確立していたから、
写真と共に人生を歩んでいる人かと思ったのに……
「たまに雑誌社から小金を貰って写真を提供しているけど、写真集は一冊も出していないんだ。
写真展もこうやってお金を取らずに自由に見て貰っているし、プロとは呼べないよ。
名乗ってもいない」
「お金を取らない…じゃあ、今回の写真展の出展料はどうしてるんですか?」
流星が素直な質問を口にした。
私もそれは気になった。
デパートの催事場の一角の賃料がいくらかなんて想像が付かないけど、安くはないよね?
「このデパートのお偉いさんにツテがあってさ、小スペースならタダで良いって言ってくれたんだ。
代わりに、お孫さんの七五三の写真撮影を無料で引き受けたけどね。
ギブアンドテイク、実に分かりやすい!ワハハハッ!」