ラベンダーと星空の約束
「だろ〜?実は僕、昨日もこれを食べたんだ。
うん、今日も旨いな。
明日も食べに来るかな」
それは本当に美味しくて、私が今まで食べてきたサンドイッチとは格が違った。
付け合わせのポテトチップスも、揚げ立て熱々で美味。
これは凄い。
うちのお店でもこんなサンドイッチ作れないかな?
富良野には『かみふらのポーク』と言う名産の豚肉がある。
ベーコンは上質な物が手に入るし、野菜の鮮度も抜群だ。
ご当地グルメの『富良野オムカレー』に、厚切りベーコンがトッピングされていたら、テンションあがるよね!
美味しいベーコンは、集客率を上げそうな気がする。
厚切りベーコンとシャキシャキ新鮮野菜入り、“富良野風クラブハウスサンド”なんて新メニューにどうだろう?
絶対美味しい!
…でも…高いベーコンを仕入れると単価が上がるし、
うちはレストランじゃなく、気軽で安い軽食屋だから……
頭の中で算段し…
富良野風クラブハウスサンドは諦めた。
仕方ない。
新メニューの事は置いといて、今はこの美味しさを堪能しようと思う。
食べながら我妻さんに聞いてみたかった最後の質問をする。
なぜ白黒写真に『彩の写真展』と題を付けたのか、
我妻さんにとっての『彩』とはどんな意味なのか。
我妻さんは自分が答える前に、私達の感じた『彩』についての説明を求めた。
まず流星がそれに答え、その後に私も答えた。
相槌を打ちながら楽し気に聞いていた我妻さんは、
聞き終えると拍手し、私達を褒めてくれた。
「браво!браво!(ブラボー!ブラボー!)
いやいや、こんなに真剣に考え見てくれたなんて感激だなー!
おじさん泣いちゃいそうだよ、ワハハハッ!」
泣いちゃいそうと言いつつ豪快に笑う彼は、
中々本当の『彩』の意味を教えてくれない。
「僕の思いと君達それぞれの思いが、同じである必要はないんだ。
君が古いロシア語の文章を通して、あの写真から色を感じたのなら、
君にとってそれが『彩』である事に間違いない。
彼女が『人の営み』に色や音や香りを感じ、それが『彩』だと思ったのなら、
それが彼女にとっての『彩』なんだよ。
それでいいんだ。
答えなんて初めから無いと言えるし、見た人の人数分あるとも言える」