ラベンダーと星空の約束
「うおー!何故に!?
もっとみんなロシア観光しようよ!
異国情緒溢れてるよ?歴史を感じるよ?
ロシア人の選ぶ観光先に、日本はメジャーだよ?
もっと遊びに来てくれよー!!」
流星に指摘され、彼は初めてその事に気付いたみたい。
ロシア在住の日本人の我妻さんと、
輸入のタラバガニくらいしかロシアに縁のない、私みたいな日本人の感覚が違っていても無理はないか……
自分の写真を「分かり難い」と表現した我妻さんだけど、
ロシアの写真だと気付かれない事は予想外だったみたい……
流星は話しながらも料理を口に運ぶ事は忘れていなくて、
私がクラブハウスサンドを食べ終えるよりも早く、オムライスもラザニアグラタンも…全ての料理を胃袋に納め終わっていた。
一番口数の多い我妻さんの皿には、サンドイッチ一切れと、付け合わせのポテトチップスがまだ残っている。
流星の目線がそのポテトチップスで数秒止まっているのに気付き、
我妻さんはサンドイッチだけ手に持ち、お皿ごと流星にあげていた。
「そうか…あれでロシアだと気付かれないのか……
どんな風景なら気付いて貰える?
サンクトペテルブルクの血の上の教会は?
それともモスクワ・コスモミュージアム?」
「俺は分かりますけど…
それも知名度は変わらないと思いますよ。
そうだ、その質問は俺より紫に聞いて下さい。
彼女ならロシアに関して、平均的な日本人の知識量だと思いますから」
私が平均的な知識を持っているのか分からないけど、
流星だと知り過ぎているから、確かに私が考えた方がいいよね。
日本人の誰もがロシアだと分かる風景……
「うーん…」と1分考え、出した答えは“カニ”
やっぱりロシアと言えばカニ漁のイメージが強いよね。
うちの土産物屋でカニは扱っていないけど、北海道にとってもカニは大切な観光資源。
北海道の温泉旅館で良く見るイベント『カニ食べ放題』は、
オホーツク海で捕れるタラバ・ズワイガニを、ロシアからの輸入にかなり頼っている。