ラベンダーと星空の約束
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冷たい北風が吹き抜ける11月。
二度目の文化祭が開催され…そしてあっと言う間に終わった。
今年の文化祭は柏寮をPRする必要もなく、
去年の様な恥ずかしいコスプレもしなくていい…
と思っていたのに、そうはいかなかった。
今回の私のコスプレは“黒猫”
そうなったのは瑞希君のせいでも、勿論たく丸さんのせいでもなく、
クラスの模擬店の為にそんな格好をした。
うちのクラス2-Bの模擬店は『猫カフェ』
猫カフェと言えば、普通はお茶を飲みながら、お店で飼っている本物の猫と戯れる、そんな場所。
だけど、高校の文化祭に本物の猫を連れ込む訳にいかないから…
猫耳のカチューシャを付けた女子生徒と、
猫カフェなのに、何故か犬耳を付けた男子生徒が接客するというスタイルのカフェを開いた。
今年の文化祭はうちのクラスだけじゃなく、
メイドや執事、はたまたアニメキャラとか…
コスプレ系の模擬店が目立つ。
コスプレって東京の大衆文化…?
みんな抵抗なく楽しんでいるみたい……
私は…瑞希君に色々着せられてきたから、以前よりは抵抗感がないけど、
やっぱり黒猫コスプレは恥ずかしかった。
クラスの女子は普通の制服に猫耳と尻尾を付けただけなのに、私だけ別衣装で全身黒猫だった。
裁縫クラブのクラスメイトが、モコモコの黒いファー生地で作ってくれたこの衣装は、
売り物みたいに上手で感心したけど…
なぜか露出度が高め……
太ももとお腹と背中に生地は無く、肌寒いし恥ずかしい。
しかも頬っぺにヒゲまで描かれ、
言葉の語尾に「ニャ」を付けろと言われた。
露出度高めな黒猫の私…
恥ずかしいけど、クラスに貢献する為、体を張った。
麻痺のある私はみんなの様にウェイトレス役は出来ないし、
裏方も私より他の人がやった方が断然早い。残念だけど。
だから黒猫の私の役目は、入口横の机の上に座り、客を呼び込む“招き猫”
段ボールと金色の折り紙で作られた大きな小判を持ち、
招き猫ポーズで「寄って行ってニャ」と営業スマイルを放つ役割。