ラベンダーと星空の約束
 


柏寮跡地に新しい寮を建設する予定はないそうで、どこかに部屋を借りなければならない。




流星の部屋のこたつの中はほっこりと暖かく、

テーブルの上には熱いほうじ茶と、かごに入った蜜柑。


こんなに落ち着く冬のアイテムに囲まれているのに、心はソワソワ落ち着かなかった。



冬休み明け早々にどこかに引っ越さなくてはならない。

後2ヶ月以内に部屋を探さなくては……




家賃無料を当てにし柏寮に住んでいた私達の事は、学校側も分かっている。



取り壊しの話しが出始めた頃、学校近くの学生会館や安アパートの口利きをしてくれると言ってたし、家賃補助もすると約束してくれた。



だから柏寮を出されても、何とかなると安易に考えていたのに……



退去通告のその用紙に書かれていた、家賃補助の金額を見て固まった。



その金額は…
1人月額1万円……



これは…無理だ。

この辺で一番安いボロアパートを借りても、どんなに節約しても、今の仕送りじゃ生活していけない。



流星と瑞希君は卒業まで2ヶ月分を何とかすればいいけど、

私は後1年と2ヶ月……



そんなに長期間の仕送り増を、両親に頼み難い。



うちの両親なら生活を切り詰めても、私の為に送金してくれようとする。



これ以上の負担を掛けたくないのに、どうしよう……



私は一人頭を悩ませていたけど、流星はさも当然の様にこう言ってくれた。




「でさ、新しく住む場所だけど、実は既に物件を見つけて来てるんだ。

ここはどう?

学校から徒歩5分で築8年の3LDK賃貸マンション。

家賃は俺が払うから心配しないで」




「大ちゃん、3LDKって…
もしかして僕も…?」




「当たり前じゃないか。

瑞希の進学先の美容専門学校も、そこから通える距離だろ?

紫の卒業まで、3人仲良くやろうよ」





3人でルームシェア……
家賃は流星持ち……


それは助かるけど…
でも倫理としてどうなんだろう……



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