ラベンダーと星空の約束

 


 ◇◇


流星の様子を確かめに行った瑞希君が戻ってきたのは、夜8時を過ぎてからの事。

随分と時間が掛かったみたい。



瑞希君の予想通り、流星は心臓の主治医のいる大きな総合病院に入院していて、

病室を見つけ出すまでは、それ程時間が掛からなかったそうだ。



しかし、病室には面会謝絶の札が掛けられ、中に入る事は出来ない。



通り掛かった看護師に情報を求めたが、入室は家族のみ可という事以外、何も教えてくれなかった。



個人情報が煩く取り沙汰される昨今では、患者の情報の守秘義務が病院側にもあるから、教えてくれないのも当たり前かも知れない。



それで瑞希君は、流星の実家に電話を掛けてみた。



それはすぐに留守番電話に繋がってしまい、家族は不在だったらしい。



家にいないという事は、面会謝絶のドアがピタリと閉められた、この個室の中に既に家族が居るのか、それともこれから面会に来るのか。



その可能性が高いと考え、流星の家族が現れるまで、病室の入口で待ち続けたそうだ。



その時病室内で流星に付き添っていたのは、継母の美沙子さん。



瑞希君と彼女が顔を合わせる事はこの時は無かったそうだが、

夜7時を過ぎた頃、会社帰りのスーツ姿の流星の父親が現れ、やっと状況を聞く事が出来たらしい。



聞いた話しに因ると、

流星は前日の深夜から高熱が出て今朝受診し、インフルエンザの診断でそのまま入院となっていた。



高熱と呼吸苦から、今は会話するのもしんどい状態。



私達ならそんな苦しい状態も数日で回復に向かうけど、

免疫力を抑えている流星の場合は…

どうしても長期化が避けられないから、入院せざるを得ないとの事だった。



長期化する事で肺炎などの合併症の危険性も心配されるし、

高熱の中、十分な食事が取れない事で衰弱していく体力を保つ為に、点滴で栄養補給し続けねばならない。



そんな苦しい状況ではあるけど、医師は必ず回復すると言ってくれた。



若く基礎体力もある流星なら、深刻な事態に陥ることはないと断言してくれたそうだ。




「だからさ、大ちゃんは大丈夫だよ。

今は苦しいだろうけど、絶対に治るから」




「うん…」




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