ラベンダーと星空の約束
 


「流星、私の事どんだけ鈍いと思ってるのよ…

私にもすぐに分かったよ。

美沙子さんと買物って所でまずおかしいと思ったし、その後の長文メールで入院してるんだって気付いた」




「うわ〜…本当に最初からなんだ…

バレてないと思って、それっぽいお土産でも買って帰ろうと思ってた俺って、馬鹿じゃない?

すげー恥ずかしいんだけど。


そっかー…瑞希には気付かれる可能性を感じてたけど、紫までとは…

ごめんね…心配掛けた上に、気を遣わせてたなんて…本当ごめん」





流星はしゅんと肩を落とし、すまなそうに謝る。




「謝るのは私だよ。

インフルエンザ移してごめんね、注意が足りなかった。

それと…入院したって言えなかったのは、私が不安がるからでしょ?

嘘付かせてごめんね…」





流星の手を取ると、温かく乾燥気味で、少しカサついていた。



病衣の七分袖をそっと捲ると、点滴の針の跡で青紫色に変色している所が数ヶ所見える。



そこを摩りながら、腕も顔も少し痩せたと感じていた。



元気そうではあるけど、肌艶は以前の物ではないし、どこと無く窶(ヤツ)れて見える。



一週間以上熱が下がらず苦しんでいたのだろう。

私なんかとは比べ物にならない程、苦痛を味わったのだろう。



そんな中でも私を想い嘘を付いてくれた彼の気持ちを考えると、涙が出そうになる。



でも…堪えた。

私が不安がるから、流星は嘘を付かねばならなかったんだもの。



有って欲しくないけど、万が一また入院する事があったら、

今度は正直に言える様に、私が強くいなければならない。



弱い心は流星に見せたらダメ……



そう思い涙を飲み込み、精一杯の笑顔を作る。




「…紫……」




流星は何かを言いかけ言葉を飲み込み、その代わりに真顔で私の目をじっと覗き込んでくる。



私の心を読み取ろうしている様な探る視線に、しっかりと目線を合わせ、見つめ合う。



強くなるから、もう優しい嘘は付かないでという思いを込めて。




「流星が必ず元気になるって信じてた。
顔を見れて今凄く安心してる」




私がそう言うと、流星はホッとした顔して、柔らかく微笑んでくれた。



私を引き寄せ、優しく抱きしめてくれる。



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