ラベンダーと星空の約束
 


「なっ何を言って…私はエロくない!
本当に変な事は考えてなかったんだよ!!」




「は〜いはい」




「その言い方!全然信じてないじゃない!もうっ!」




「アハハッ!」





全力で否定する私を見て、流星は声を上げ楽しそうに笑う。



笑い続ける彼を見ている内に、何だかムキになって否定する自分が滑稽に思え…

気付くと私も笑っていた。



一昨日とは違い、私の泣き声ではなく、2人の笑い声が響く病室は、

なんだかとても幸せで、帰りたく無かった。




だけど時間は過ぎていく。

窓の外の夕日が落ちて病室に明かりが灯り、空が紫色に染まり掛けていた。



病室の外が少しだけ賑やかになり、配膳のワゴンの音と、夕食を取りに出た入院患者達の声が聞こえた。




「流星、そろそろ帰るね…
次に会えるのは一週間後。少し淋しいな…」




「…大丈夫、君には温かい家族と大樹がいるから…

淋しさなんて、富良野の皆がすぐに消してくれるよ……」





富良野に居ても流星に会えないのは淋しい。

それを伝え様としたけど、

流星が私の衿元のシルバーチェーンのネックレスに指を掛け、引っ張り出したから、

話しが逸れて言えず終いだった。




「あのさ…これ、しばらく貸してくれない?」




白いセーターの上に引っ張り出されたのは、薄紫色の淡い光を揺らす紫水晶の指輪。



再会の約束に預けられた指輪。

記憶を取り戻した彼に一度返し、すぐに「あげる」と戻された物。





「貸してって…何で?」




「この間父さんと、死んだ母さんの話しをしたんだ…

その時『形見の指輪はどうした?』って聞かれてさ…

『彼女にあげた』って言ったら…」




「勝手な事してって怒られたの?」




「怒ってはいないよ。

ただ『人にあげる前にもう一度見たかった』って言うからさ、

だから実家に帰ったら見せようかと思ったんだ」




「そっか。これは流星の両親の思い入れのある指輪だもんね。

分かったよ。はい、お父さんにゆっくり見て貰って」





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