ラベンダーと星空の約束
「休学…学校を辞めた訳じゃないんだ…
それって…いつか戻るつもりがあるって事かな?」
「残念だけど、あの文面を見る限り、その可能性は低いと思うよ。
これを君に言ったら、大ちゃんの想いを踏みにじる事になるけど…
君には選択の権利があると思うから言うよ。
大ちゃんは、君には高校を無事に卒業して欲しいと思っている。
だからもう来るつもりのない高校に『退学願い』じゃなく『休学届け』を出したんだ。
そうすれば、君が中退という選択肢を選ばないだろうと思ってさ」
「あ……」
瑞希君の推測は当たっていると思う。
流星に会う為に東京に来た私は、流星が居なくなった東京に、居続ける意味を感じない。
高校は卒業した方がいいと思うけど、柏寮も無く流星も居ないこの街に、住み続けるのはその内きっと辛くなる。
元々高卒の資格にこだわりは無かったから、気持ちが落ち着いた頃、中退の道を選びそうな気がする。
だけど流星が学校に籍を置いている以上、私は退学する事はない。
もしかしたら帰ってくるかも知れないと、
一縷(イチル)の望みを捨て切れず、卒業まで東京に居なければと思ってしまう。
流星はそんな私の気持ちを見越して、退学届けじゃなく『休学届け』を出して行った……
「どうする?待っていても、大ちゃんは戻って来ないと思うよ。
それでも大ちゃんの思惑通り、僕と卒業までこっちで生活するか、
それとも大樹の居る富良野に帰るか。
紫ちゃんはどうしたい?」
「……… 分からない…今は…そこまで考えられない……」
きっと私は、流星の思惑通り退学する事は出来ず、卒業まで東京にいる道を選ぶのだろう……
そんな気がするけど、決断までには時間が欲しい。
今は…流星が居なくなった事実を受け止めるだけで精一杯だ。
分からない事だらけで、自分の気持ちをどこに落ち着かせたらいいのかも見失なっている。
こんな時こそ手の中に握り締めたい、紫水晶の指輪もない。
頭の中を駆け巡るのは
「どうして…」「どこへ…」
そんな疑問ばかり。