ラベンダーと星空の約束
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柏寮に別れを告げた瑞希君と私は、夜の帳(トバリ)の下り始めた住宅街を10分歩き、
学校を挟んで対角の方角にある、新しいマンションにやって来た。
昭和の雰囲気の木造二階建ての柏寮とは違い、
ここは然程(サホド)築年数の経っていない、7階建て鉄筋コンクリートの近代的なマンションだった。
小さなエレベーターで5階へ。
下りてすぐの501号室が、私達の為に流星が借りてくれた部屋だった。
玄関を上がると短い廊下があり、その廊下沿いの左側に個室が二つと右側にトイレと浴室がある。
廊下の突き当たりにリビングへの扉があり、その右隣りにもう一つ個室があった。
12畳程のリビングには、対面式のキッチンとカウンターテーブル、
テレビの前には二人掛けの白い布張りソファーと硝子テーブル、
観葉植物まで置いてある。
ファミリーサイズの冷蔵庫には食料品が詰め込まれ、暫く買物に行かなくても過ごせそうだった。
新品の洗濯機に掃除機に電子レンジに、テレビとブルーレイレコーダー……
『新生活に足りない備品を購入する際に、それを使って欲しい』
そう手紙に書いてお金が置いてあったけど、買い足す物なんて思い付かない程、何もかも揃えてある。
部屋自体も思ったより広く、綺麗で立派。
リビングが南西向きの角部屋という、日照条件の良いこの部屋の家賃は高そう。
来年の3月まで払い済みの家賃と、新品の家電や家具の購入費は…
合計すると一体いくらになるのか。
こんなに立派な部屋にしなくても、少し不便な位で良かったのに……
リビングを見た後、三つの個室のドアを開ける。
南側に窓がある二つの個室には、私と瑞希君の私物が、それぞれの部屋に綺麗に収められていた。
一方、西側に窓のある個室には何も物がない。
元々3人で暮らす予定で借りていたこの3LDKの部屋は、流星が居ない事で一部屋余ってしまった。
溜息をつきリビングに戻りキッチンに立つ。
午前中に流星の手紙を読んだ瑞希君は、きっとお昼も食べていないだろう。
私は食欲なんてまるで湧かなかったけど、瑞希君には夕食を食べて貰わないと。