ラベンダーと星空の約束
そして手術から2年目3年目と節目の日を迎える度、
不安と希望を織り交ぜた様な声で「〇年生きられたよ…」と呟く少年に、
少女もまた、不安を募らせていく。
この先一緒に居られるのはどれくらいか……
もしかすると、そう遠くない未来に、少年は死んでしまうのではないか……
そんな恐怖を抱く様になってしまう。
恐怖と不安に押し潰され、終に少女は泣き出した。
「怖い…あなたが死ぬのは嫌だ…」
と言いながら……
そんな彼女を見て少年は決意する。
自分が側に居ると彼女を苦しめる。
恐怖と不安を与えてしまう。
何も言わず、彼女の元を去る少年。
遠く離れた地に向かう飛行機の中、ラベンダー畑で微笑む少女の姿を、少年が思い浮かべている所で物語は終わる。
『――――――――――――――――――――――………
ただ、彼女の笑顔を守りたかった。
それは僕にとって、共に生きる事よりも…何よりも大切な事だった。
さようなら…愛しい人。
どうか君は笑っていて…
紫色の波に揺られ、いつも…いつまでも笑っていて…… 』
私は言ってはならない事を、口にしてしまったんだ……
この少女の様に『怖い』と言ったから…
流星も少年と同じ結末を選んだ。
そうだと思った。
そうに違いないと思った。
この本を初めて読んだ時、
「何でこんなラストにしたの?」
と結末にムッとしたのを覚えている。
「私はこんなに弱くない。
こんな風に泣いたりしない」
再会する前のあの時は、そう思っていた。
そして再会して間もない流星に、こう言って突っ掛かった事もあった。
『あのラスト変えてくれない?
私ならどんなに辛くても好きな人と一緒に居たい。
共に生きられるなら、その後に訪れる悲しい別れなんか怖くない』
どんなに辛くても、一緒に居たいという気持ちは今でも変わらない。
だけど…その後に訪れる悲しい別れは…怖くないとは、今は言えない。
流星を愛し過ぎて…
私は臆病になってしまったのか……