ラベンダーと星空の約束
墨の様に真っ黒な背景の中、今日一日に聞いた物音がザワザワとした耳鳴りとなり、一遍に襲い掛かる。
富良野を発つ朝の、賑やかな家族の声……
飛行機のアナウンスと乗客の話し声……
タクシーのエンジン音と、校庭で部活動に励む生徒達の声……
柏寮の軋む床板を歩き回る自分の足音と、この部屋の床に落とした本の音……
それから……
瑞希君宛ての手紙と書きかけて捨ててあった私宛ての手紙の言葉が、
流星の声となり頭に響いてくる……
『側に居られないのなら、彼女の中の俺の存在も、柏寮と共に消えてしまえばいいのに……』
消える訳がない……
あなたと出会ったあの夏の輝きを…
柏寮で過ごした温かな日々を…
私だけに向ける笑顔も眼差しも…言葉も想いも…
この先何年逢えなかったとしても…忘れる訳がないじゃない……
『君の前から去る理由は、君に非がある訳ではないとそれだけは分かって欲しい…』
私のせいだった。
私が弱さを見せたから、あなたは消えてしまった。
『怖い』なんて、言ってはいけなかったのに……
泣いてはいけなかったのに……
漏れ出た私の弱さはあなたを傷付け失望させて、この先の2人の未来を奪ってしまった……
もう『怖い』なんて口にしないよ…
二度と泣いたりしないよ……
だからお願い…戻って来て……
流星………