ラベンダーと星空の約束
「どうしちゃったのって…どうもしないよ。
普通の私だよ。変な瑞希君。
アハハッ!」」
奇異な物を目にした様に、驚き戸惑う彼の表情が面白くて、暫く笑いが止まらなかった。
私は平気。
ほらね…こんなに笑っていられるよ。
私はみっともなく泣き喚いたりしない。
強い……
そう…強いんだよ。
私はあの本の弱い少女じゃない。
『ラベンダーみたいな女の子』
なんだもの。
凛として、強く逞しいラベンダー。
流星がそう言ったんだよ。
私は強い。
今だってほら、笑顔を作れるから。
ねぇ流星、私は強いでしょ?
弱音を吐かなきゃいいんでしょ?
いつも笑っていればいいんでしょ?
そうしたら…
流星は戻って来るんでしょ?
「瑞希君、朝ご飯にしよっか。
昨日実家から持ってきた鮭焼くから待っていて。
脂がのってすっごく美味しいんだよ!
鮭児って知ってる?高級魚!
滅多に食べられないから、味わって食べてね!
後は…お味噌汁の具、何がいい?
冷蔵庫の中ギッシリ色々詰まってるから、何でも作れそうだよ!
あっ! プリンまで入ってる!
新発売って書いてあるよ。後で一緒に食べようね。
ふふっ楽しみだなー!」
冷蔵庫を開けて、必要な物を引っ張り出した。
昨日塩を振ってしまって置いた鮭の切り身を出し、グリルで焼いた。
豆腐とほうれん草で味噌汁を作り、卵とチーズでオムレツを作った。
野菜けが足りないな…
そう思い、冷蔵庫の野菜室を開けた。
胡瓜を見つけ、顆粒の昆布だしと塩で揉み、簡単浅漬けを作った。
柏寮で使っていた小さな冷蔵庫とは違い、ファミリーサイズのこの冷蔵庫には、色々な食材が揃っている。
本格中華も作れそうなガスレンジは、鍋を三つも同時に掛けられる。
柏寮じゃ、作りたくてもあれこれ作れなかったから、これは助かるよね。
柏寮から引っ越して良かった!
良かった…?
あれ…昨日うどんを食べてた時は確か…
柏寮に帰りたいって思った気が……まぁいいか。