ラベンダーと星空の約束
◇◇
紫のいる街にたどり着いたのは、飛行機を下りて2時間後のこと。
富良野を出てから、約7時間経っている。
ここは、クソ遠いな……
腕時計を見ると19時を回り、辺りはすっかり暗くなっていた。
オカマに指示された停留所でバスを下り、南へ5〜6分歩くと、言われたマンションが見つかった。
迷わずすぐに目的地を見つけ出せた事に少し驚いていた。
夜道が真っ暗な田舎なら、知らねー建物を探し回ってる内に遭難してそうだけど、
東京の夜っつーのは、随分明るいな。
マンションの外壁の色まではっきり分かるくらいに明るい。
夜が明るいのって、すげー違和感ある。
明るさだけでなく、富良野とは何もかも違うこの街は、俺にとって居心地悪りぃ。
1月の足元に雪がねーのも変だし、家と家の間隔が近すぎんのも変。
俺ん家と紫ん家は隣だけど、自転車5分の距離が開いてんぞ。
ここは家だらけで気持ち悪りぃし、しかも平屋の家が一つも見当たらねぇ。
高い建物が多過ぎて空が狭い。
息苦しいっつーの。
それからこれも違和感あんな。
1月半ばだってーのに、何で気温がプラスなんだよ。
少し歩いただけで暑いじゃねーか。
着ていたダウンジャケットファスナーを全開にし、北風を体に入れると、ようやく汗が引いていく。
富良野と何もかも違うこの都会で、紫は約2年間、よく生活してこれたなとしみじみ思っていた。
まぁ、流星が居たから堪えられたんだろうけどな……
マンションの明るい玄関から入り、エレベーターで5階まで上がる。
乗り合わせた香水臭せー女が、3階のボタンを押した後、俺を横目でチラチラ見やがる。
見かけない俺を警戒している目付きだ。
俺が少し手を動かしただけで、ビクビクしやがってムカつくな……
けっ、てめぇみたいなケバイ女に興味なんかねーよ。
自意識過剰じゃねーの?
バーカ…