ラベンダーと星空の約束
 


俺が居間に入って行くと、オカマがカウンターテーブルに突っ伏していた。



俺が来たことに気付いてるはずなのに、動かねー。




「おい、オカマ。
何のんきに寝てやがる」




「オカマって言わないで…
うっぷ…喋ると食べた物が出てきそう……」





カウンターテーブル上は、オカマが突っ伏していた場所以外、料理の皿で埋め尽くされていた。



唐揚げ、グラタン、酢豚、グリーンサラダ、

麻婆茄子、肉じゃが、塩鮭、煮玉子、卵チャーハン、

オムライス、オムレツ、だし巻き玉子、親子丼………



何だよこの量…

何日分の料理だよ…

大食い選手権やってんのか?



「美味そう」と思う前に、ぞっとした。




オカマと2人でこの量はねぇだろ。

てことは…これ全部、流星の為に作ったって事か……

チッ…いかれてやがる。




しかも卵料理の比率高過ぎねぇ?

流星って卵好きなのか?

ガキみてぇな味覚してやがんな……




ダウンジャケットをその辺に脱ぎ捨て、オカマの隣の椅子に座り食い始めた。



オカマが疲れた面を向け、溜息をついて、立ち上がる。




「助かった…僕もう一口も食べられない……

いい食べっぷりだね大樹……今日だけは、君が頼もしく見えるよ……」




「今日だけって…ムカつくオカマ野郎だな」





オカマと言われても最早反論する力の残ってねーオカマは、

ソファーまで移動し、腹を摩りながら苦しそうに寝転がった。



オカマをそんな状態に追い込んだ張本人の紫が、

「大丈夫?」なんて言いながら、膝掛けをかけてやっている。




「瑞希君、もしかして、食べ切れないから大樹を呼んで食べて貰おうと思ったの?」




「違うよ…今朝、大樹に電話した時は、それが目的じゃ無かった。

でも…今はそれも目的に入れたい気分……」




「意味分かんない」





アホになったお前の頭じゃ、オカマの言ってる意味は分かんねーだろーな。



後で何もかも教えてやるが、取り合えず今は食う。

腹減ってるし。



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