ラベンダーと星空の約束
近くにある皿から順番に片付けていった。
味はいつもの紫の味。
変な所はねーし、普通に美味い。
けど冷めてんのもあった。
グラタンやチャーハンは湯気が立つ程熱いが、塩鮭とオムレツは冷め切って、表面はパサついてやがる。
冷めてる料理と熱々な料理、それからまだエプロン姿の紫……
こいつ、朝から今まで作り続けてやがったのか。
マジでやべぇな。
流星の為に作った料理を、片端から平らげる。
そんな俺を見て、薄っぺらい笑みを張り付けた紫が止めに入る。
「大樹食べ過ぎだよ!
流星の分も残して置いて?
夜中に帰ってきたら、ご飯食べると思うから…」
「…てめぇはマジでアホになっちまったのかよ……
流星の分は要らねぇ。
あのバカ野郎は帰って来ねぇ」
紫の曇った目を真っすぐ見てそう言うと、ヘラヘラした顔付きが一瞬真顔に戻る。
しかし一秒と持たず、すぐにまたわざとらしい笑顔を作りやがった。
「そっか…流星、今日は帰らないのか。
じゃあそれ、大樹が全部食べていいよ。
流星の分は、また明日作るから」
「また明日作る」と聞き、
ソファーでグッタリしてるオカマが
「勘弁して…」と小声で呟いた。
3分の2は根性で食ったけど、さすがの俺でも全ては食い切れず、
残りは紫がラップをかけ、冷蔵庫にしまっていた。
「おい、紫は食ったのかよ?」
「食べた…あれ?私、今日何か食べたかな?
味見はしたけど…今お腹空いてないから、食べたのかな?」
自分の飯をどうしたのかも分かんねぇのか……
てめぇは呆けかかったバアさんか。
皿が片付けられ、広くなったカウンターテーブルに頬杖をつく。
正面の、対面キッチンに立つ紫を見ていた。