ラベンダーと星空の約束
震えながら大樹に縋り付き、泣き崩れていた。
流星の短い命を嘆き悲しみ、溢れる涙は止まらない。
「流…星…うあああぁぁ…」
怖い…怖い…怖い…
流星の命の終わりが…怖くて堪らない……
でも……
泣いている内に
「怖い…でも…」と気づく。
流星の短い命の期限は震える程に怖い。
でも私が恐れているのはそれだけじゃない。
私には、目の前で生の終わりを見せられるより、もっとずっと恐れることがある。
それは…待つこと。
消息も…生死すらも…
何もかも分からないあなたを、待ち続けるのが一番怖い。
幼子の様にしゃくり上げ、止まる事を知らないこの涙は、
紛れも無く『また』あなたを待たねばならないのかと恐怖する涙。
6年前のあの夏、富良野に戻ると約束してくれたあなたを、私は5年間待ち続けた。
待つだけの日々は怖かった。
手術の結果も生死も分からず、不安の中でひたすら待ち続けた。
富良野の初夏、ラベンダーが咲き始めると、今年こそ戻ってきてくれると目の前の紫色に希望を託した。
そして花穂を刈り取る晩夏になると、この夏もあなたは逢いに来てくれなかったと落胆した。
待つことの恐怖を、私は知っている。
そして今回はあの時以上の恐怖を味わう事も……
待つという行為は同じでも、今は支えてくれる約束がない。
私の元へ戻るという言葉も、紫水晶の指輪も……
また逢えると信じられる約束は何もない。
今度はあの時以上の不安と恐れを抱きながら、私はまた、あなたを待たなくてはならないの?
教えて欲しかった…
こんな風に居なくならないで欲しかった…
傍に居たかった…
もっと私を信じて欲しかった…
怖い…あなたが死ぬのは怖いよ……
だけど私は…
怖くても不安でも涙を流しても…
それでもあなたと一緒に生きたかった。
あなたの命の灯火が消えるまで…
傍に居させて欲しかった……
「流星……ううぅっ…………流星……」
大樹が背中を摩ってくれても強く抱きしめてくれても、流星を失った悲しみは、涙となり涸れることなく流れ続ける。