ラベンダーと星空の約束
隣で綺麗な星空を見上げていた大樹が
「星見てると首が痛てぇな…」と、
何とも美的感覚の欠如した感想を述べ、私に顔を向けた。
「紫」
「何?」
「これやるよ」
手の中に無造作に押し付けられた物は、片手サイズの小さな白い箱。
「誕生日プレゼント?」
「そう」
今日は私の20歳の誕生日。
大樹の彼女でなくなってからも、こうして毎年プレゼントをくれる。
大樹の彼女だった16歳の夏は、8月の誕生石、ペリドットの小花の付いたブレスレットを貰った。
あのブレスレットは、記憶が蘇ったばかりの流星が「預からせて」と持って行ったまま、
結局、私の手元に戻って来てはいない。
大樹からアクセサリーを貰ったのは、後にも先にもあの時だけ。
それ以降のプレゼントは、変な模様のTシャツとか、何のキャラクターか分からない妙なイラストの入ったタオルとか…
子供の頃みたいに、ウケ狙いの物に戻った。
これも大樹なりの気遣いなんだろう。
自分の想いが私の負担にならない様にって…
そんな風に思い、プレゼントを選んでくれたのだろう。
私の為に、親友で弟のポジションを守ってくれている大樹。
こんな風にさりげない思いやりを感じる度に、大樹って本当に私の事が好きなんだと切なくなる。
私も大樹の事は大好きだよ。
でも…ごめんね。
流星が隣にいない今でも、私の心も体も求めるのは彼だけ。
大切な大樹でも、そのポジションに入れる事はできないの……
手の中の白い箱を開けた。
今年はどんなふざけた物が入っているのかと、笑う準備をして開けたのに、
意外にも出てきた物は、小さな手の平サイズのオルゴール。
「あれ…まともなプレゼントだね……」
「あ゙?ここんとこ、まともな物しかくれてやってねーだろ」
「去年のTシャツと一昨年のタオルと…」
「まともだろーが。
ジャガイモに顔書いた奴の方が良かったのか?」
「………」
あの変なTシャツと妙なタオル…
『ウケ狙い』で『思いやり』じゃなかったみたい。
大樹に関してまだ知らない事があったのだと驚いた。
服装に無頓着な奴なのは知っていたけど、趣味も悪かったんだね……