ラベンダーと星空の約束
小さなオルゴールは四角い透明なプラスチックケースに入っており、
歯車や音色を奏でる金属板など、中の仕掛けが良く見える様になっていた。
恐らく銀色だと思われる仕掛けの金属部分は、ライトアップ中の青い光りに照らされ、ラベンダーと同じ紫色に見えた。
横に付いているネジを巻くとぜんまいが回り出し、ラベンダー畑の中に小さな澄んだ音色を響かせる。
ポロポロポロンと流れるこのメロディーは…
『星に願いを』
「なんか、今のお前みたいじゃね?毎晩星ばっか見やがってよ。
流星…いい加減帰れよな…今頃何やってんだか……」
「今頃…きっとどこかの星空を見上げてるんじゃないかな……
そして…私を想って淋しくなってると思う」
「お前って可愛くねー程自信過剰な奴だよな…ま、俺もそう思うけど。
自分から離れといて淋しがってんだよ、あのバカ野郎は」
「ねぇ大樹…流星は…いつか戻って来るよね…
淋しさに耐え切れずに…逢いたくて我慢できずに…帰って来るよね…」
「ああ…」
『星に願いを』
その美しいメロディーに乗せて、私の想いも流星に届けと願う。
待ってるよ…ずっと待ってるよ……
この淋しさに切なさに耐えていれば、またあなたに逢えると信じている。
2人の結末はまだ決まっていない。
私達の物語にはまだ続きがあるんだって…そう信じている。
根拠がないのが悲しいけどね……
紫色の波間に流れる美しいオルゴールのメロディーが徐々に緩やかになり…
最後の一音が闇に吸い込まれ、消えて行った。
サワサワと花穂を揺する風の音と、虫の音が耳に戻って来る。
一拍置いて大樹のスマホが鳴り出した。
大樹はくたびれたデニムの後ろポケットから、面倒臭そうにそれを取り出す。
明るく光るディスプレイを見るなり、嫌な顔をした。
「なんだよオカマ。
用もねーのに掛けてくんな」