ラベンダーと星空の約束
 


「ありがとう!

忙しいのに電話してくれて嬉しいよ。

今日も遅くまで仕事だったんでしょ?」




「そうなんだよ〜超忙しいよ〜。

何しろ僕は、超人気カリスマヘアーメイクアーティストだからさ〜」




「まだ見習いでしょ?
お客さんの髪、切らせて貰える様になったの?」」




「まだ…」





瑞希君は高校卒業後、予定通りに都内の美容専門学校に進学した。



今、渋谷区のとある美容室で見習い修行中。



まだカットはさせて貰えなくて、

「洗髪の他は掃除に雑用ばかりだよ〜」

って私も大樹も仕事の愚痴を聞いてあげている。




閉店後は店内に残り、遅くまでカットやパーマの練習しているみたいだし、家に居る時間が余りないと嘆いていた。



そんな忙しさに文句を言う瑞希君だけど、職業の選択は間違えていないみたい。



仕事の愚痴でさえ、電話口の声がイキイキしているもの。



電話だけでなくメールも良く届く。

色々なヘアアレンジを覚える毎にそれを自分の髪で再現し、写メでお披露目してくれる。



「こんなの覚えた!」と、

1mの高さに盛りに盛ったヘアスタイルの自撮り写メを送ってきた時は、大樹と青空と3人で笑った。



瑞希君からの面白いメールは、私の密かな楽しみでもある。




そうそう、亀さんとたく丸さんとの繋がりも切れていない。



二人共、忙しい日々の合間に近況報告のメールをくれる。



今もそしてあの時も、2人は私を心配してくれた。



流星が居なくなり1ヶ月居た大樹も帰った後、瑞希君との2人暮らしが1年続いたわけだけど、

その間、事情を聞いた亀さんとたく丸さんは月に4、5回は遊びに来てくれた。



以前の様にみんなでワイワイ焼肉や鍋パーティーをやって……



流星が居ない事と、その場が柏寮ではない事を除けば…

以前と同じ様に温かい仲間との時間を過ごせて、

一時だけでも、淋しさを紛らわす事が出来たんだ。



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