ラベンダーと星空の約束
◇◇
その日の夕方、再び防寒着を着込み、屋外の冷気に身を浸していた。
今度は雪掻きをしにきた訳ではなく、考え過ぎて熱くなった頭を冷やしたかった為だ。
昼前に起きてきた父がトラクターで除雪してくれた真っ平らな道を、ラベンダー畑の方向へと歩いて行く。
丘の稜線にそって夕陽が淡い色を残し、まだ16時過ぎだと言うのにもう早沈もうとしていた。
雪を厚く被ったラベンダーの丘がうっすらとオレンジ掛かり、冷気の中でもそこだけ温かそうに見えた。
出来ればその温かみのある場所まで行きたかったけど、
除雪のしていない手付かずの雪に足を踏み入れると、埋もれて身動き取れなくなり危険だ。
諦めてその手前の白樺並木の側まで寄り、足を止めた。
幼い日に流星と並んで座った白樺の木は、2mの積雪に埋もれ、背が縮まって見えた。
葉を落とした全ての枝は雪を纏い真っ白で、樹皮も節目以外はほぼ白いので、すっかり雪原に溶け込んでいる。
白樺並木までなら除雪された道からも数メートルの距離だし、新雪に足を踏み入れても大丈夫だろう。
そう思って足跡一つない雪の表面へと足を踏み入れる。
しかし案の定数歩進んだ所で足が抜けなくなり、バランスを崩して背中からバッタリと後ろに倒れた。
フカフカの雪が受け止めてくれるから痛くない。
倒れた事で足も無事に抜け、そのまま大の字に寝そべり空を見ていた。
雪にポスッと体を投げる感覚と、寝そべって見上げる空は…
懐かしい子供時代の遊びを思い出させる……
子供の体重だと新雪にもそれ程足を取られず歩けるので、幼い頃の私は良くこうして遊んでいた。
真っさらな雪原に体を投げ出し、人型をつける遊び。
大の字に寝そべった人型を繋げ、手を繋いだ人形の列を作ったり、
人型ピラミッドや、かけっこしている人型とか…
大樹と青空と3人で雪の上に人型のハンコを押し、遊んだものだった。