ラベンダーと星空の約束
 


言葉にせず、彼らしい写真という方法で教えてくれた。



『お節介なおじさんサンタクロースからのプレゼント』



メールに書いてあったのは、まさにこの事だったんだ。



そっか…

流星は我妻さんの元で生活していたのか……

我妻さんの家なら安心だよね…

きっと楽しい日々を過ごしているよね……



流星の居場所が、病院や一人暮らしのアパートなんかじゃない事に安堵していた。



もしかしたら心臓の具合が思わしくなくて入院しているかもと、チラリ思った時もあった。



私から身を隠す為に家族の下にも帰れず、一人暮らしの孤独な生活を強いられているのかも知れないと考えた事もあった。



だから、我妻さんの家に居ると知りホッとしていた。



確か我妻さんの家族は、奥さんのアーニャさんとその両親の4人だと、写真展の日に聞いた気がする。



想像だけど、我妻さんの家は明るく賑やかで楽しそうな気がする。



気さくで陽気な我妻さんに、彼の自慢の奥さんのアーニャさん。

それからアーニャさんの両親は、ちょっと変わった外国人の我妻さんを娘の婿として迎え入れるくらいだから、きっと心の広い優しい人達なのだろう。



そんな家庭で、流星ならきっと可愛がって貰っている筈。




「良かった…」

胸を撫で下ろしたのは、生活環境だけではない。



今住んでいる土地が、流星の憧れの地である事を嬉しく思っていた。



子供の頃からロシア文学が好きだった流星。



まだ幼い少年だったあの夏に読んでいたのも、ドストエフスキーやトルストイの翻訳本。



翻訳本ではなく原文で読みたくて、中学生の時には独学でロシア語をマスターしたとも言っていた。



写真展の後のレストランでクラブハウスサンドを食べながら、

「モスクワか…行ってみたいな…」

と独り言の様に呟いていた。



きっと読みたかったロシア語の本を大量に読み漁り、

本に描かれている情景を想いながら、モスクワの街角を散策したりして、

楽しく充実した日々を送っている事だろう。



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