ラベンダーと星空の約束
 


暫く迷走していた、どうしようもない言い争いは、一周回って元の流星の話しに無事戻ってきた。



それは良かったけど、今日の大樹はやけに流星を悪く言う。



イライラしながら反論と否定を繰り返していた私だが、大樹の次の言葉で本気で怒りが爆発しそうになった。




「あいつは肝心な所で抜けてんだよ。

居なくなりやがった理由だって、バカみてーだろ?

紫の涙は見たくないってか、ハッ軟弱野郎め」




「大樹…それ本気で言ってるの?

だとしたら許さないよ?

流星は私の為に…私の笑顔を守りたくて、辛い決断したんだよ…

本当は私の傍に居たいのに…それを堪えて離れて行ったんだよ!

その気持ちを悪く言うなんて、いくら大樹でも許さないから!!」





あの時、おかしくなった私を助けに来てくれた大樹なら…

流星の命の期限について、真剣な顔して教えてくれた大樹なら…

分かってくれていると思っていたのに…


それなのに、流星の別れの決意をバカにするなんて!



本気で怒りが湧いて頬をひっ叩こうと左手を振り上げたが、その手は敢(ア)え無く空中で捕まってしまう。



ニヤリと口の端を上げる笑い方は、私をからかう時の笑い方。




「何だ、分かってんじゃねーか」



「何が?」



「お前今自分で言ってんだろ、『本当は私の傍に居たいのに』ってな。

あいつはお前の側に居たいのに、それを泣く泣く諦めたんだろ?

だったら戻ってくる事が、不幸な訳ねーだろバーカ」



「あ……」





振り上げた左腕から力が抜けて行く。



『流星の幸せとは何か…』


私が欲しかったその答えは、大樹に教えて貰った。



大樹のお陰で…なんて癪(シャク)に障るけど、今回は大樹の勝ちだ。



そうだよ…その通りだよ……


流星の想いは今も変わっていない。

私を想わせる紫水晶の指輪を衿元で揺らしている事が、何よりの証拠だ。



流星は私の為に、一緒に生きる未来を諦めた…


だから彼の本当の幸せとは…私と共に生きる事なんだ……


私と一緒に…ラベンダーと星空の美しいこの想い出の大地で……




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