ラベンダーと星空の約束
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◇◇◇
大樹が帰って来たのは、年が明け、正月の雰囲気が消えた頃。
日本を発った日から数えると、15日振りの事だった。
自分の家に帰らず空港から直接うちに来た様で、
恐らく出発時と同じ格好のまま、19時過ぎに「ただいま」と入って来た。
長過ぎるロシア滞在に待ちくたびれていた私。
そんな私に状況報告する前に、大樹は勝手に冷蔵庫を漁り始めた。
「あんた、今まで何やってたのよ…」
「何って…ジイサンが観光して行けってうるせぇから……
おっ!鯖(サバ)の味噌煮見っけ!納豆もいいな」
「大樹!!」
「何怒ってんだよ。
ちゃんと流星見つけて来ただろ?
紫、みそ汁作って。和食が食いてー。
あそこん家でも作ってくれたけど、やっぱ何か違うんだよな」
「…… 上から二段目の右側に、肉じゃがの残りも入ってるから」
「食う!」
うちの夕食はとっくに済んでいた。
食器も洗い終え、綺麗に片付いていた台所で、
面倒臭いけど、大樹の為に一人分のみそ汁とワカメの酢の物を作り、
海老と山芋と春菊のかき揚げも揚げてやった。
「うめぇ、うめぇ」
とがっついて食べる大樹。
普段はハンバーグとか海老フライとか、洋食の方が喜ぶのに、
鯖の味噌煮を幸せそうに頬張る大樹は、余程和食が恋しかった様だ。
大樹の食事中に、青空が「お帰り」と一言いいにリビングに下りてきたけど、すぐに自分の部屋に戻ってしまった。
大樹大好きなあの子が素っ気ないのは、やっと兄離れしたからではなく、明後日センター試験を控えているから必死なだけ。
今更足掻(アガ)いても遅いと思うけどね。
母は入浴中。
私と同じで、冬場は太ると体重を気にしていて、
最近半身浴に嵌まっているから、後30分は出て来ないと思う。
父は隣町の除雪のアルバイトに出掛けたばかりで、帰って来るのは明け方だろう。
それは大樹のおじさんも同じ筈。
大原家は今頃おばさん一人で…
「男共が居なくて清々するねぇ」
と言いながら、寝そべってテレビを見てそうな気がする。