ラベンダーと星空の約束
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彩りの夏。
富良野の大地は鮮やかに色付き、観光客で賑わいを見せる。
緑成す野菜畑に、青々と茂る木々。
遥か遠くまで広がる緑の大地は、十勝岳の裾野に繋がり、山と一体となって見える。
そんな緑豊かな大地を南北に走る国道237号線、通称花人街道沿いには、うちも含めた大小様々な観光農園が点在する。
透き通る青空の下、緩やかに起伏の付いた平地や丘には、ラベンダーの花畑が広がり、
風に吹かれ、紫色に波打ち、優しい香りを放つ。
うちの所有する畑は広大な敷地の殆(ホトン)どをラベンダーが占めているが、
多種多様な花々を、大規模に植えている観光農園もある。
ポピーやケイトウ、ベゴニアにインパチェンス…
赤や白や黄色の花々が層になり、虹の様に見える花畑。
色彩溢れる富良野の夏は、賑やかに活気づいていた。
今年も沢山の観光客が来てくれて、忙しくも充実した日々を送る私。
でも…何と無く落ち着かず集中力に欠けるのは、流星がまだ帰って来ないから。
8月に入って少し経ち、ラベンダーの季節はもうすぐ終わろうとしていた。
ラベンダーの刈り取りまで後一週間。
花の季節に、流星は間に合わないのだろうか……
『もう少しだけ待っていて…』
あの短いメールをくれた日から7ヶ月が経つが、流星からの連絡は何もない。
その代わり、我妻さんが月に一度メールをくれる。
メールがくる度にホッと胸を撫で下ろす。
流星は確かにそこに居るのだと知る事ができ、
またどこかへ消えちゃうのではないかと、不安に思わず過ごしていられる。
そのメールによると、やりかけの翻訳の仕事とやらはとっくに終わっているそうだけど、
その後も流星は毎日ノートパソコンに向かい、熱心にキーボードを叩き続けているらしい。
『何を書いてるのか教えてくれないんだ。
完成するまで秘密だって。
そんな事言われたら、オジサン覗き見したくなっちゃうよ〜ワハハッ!』