ラベンダーと星空の約束
夏休みには帰ってきて、いつもの様に店で働いていたのだけど、
今日から一週間、どうしても札幌でやらなければならない事があるからと、昨日の閉店後に戻ってしまった。
グループ課題とか言ってたかな?
課題の内容は知らないけど、皆で集まると勉強じゃなく、半分はレジャーになってしまう気がする。
まぁ大学生活を楽しませてあげたいし、文句を言わずに送り出してあげたけど…
あの子がいないと店の仕事がキツくなる。
閉店後の後片付けだって、青空と分担してやってたから、今日は時間が掛かりそう。
レジを閉め売上計算をしていると、電源を切ってある自動扉を手動で開け、大樹が入って来た。
「悪りぃ遅くなった。
補充すんのビールだけ?」
「あ、ジュースマシーンのメロンソーダとペットボトルのお茶類も。
大樹も忙しいのにごめんね。
青空がいないと男手が足りなくて」
「こんくらい何て事ねぇよ。
困ってんなら、遠慮しないで呼べ」
「大樹に遠慮した事はない」
「そうだな…それはムカつくな…
もっと遠慮しろ、気を遣え」
「アハハッ!
言ってる事逆だから」
いつもみたいに他愛ない会話に二人で笑った後、
大樹はお願いしたドリンク類の補充に、裏の倉庫へと出て行った。
青空がいなくて一番困るのは力仕事。
私の右手の握力では、ビールケースやドリンクの詰まった箱を持ち上げるは不可能だった。
開店中はアルバイトの男の子に頼むけど、皆を帰した閉店後に補充したいとなると…つい大樹を頼ってしまう。
大樹だって畑の仕事が忙しい。
ジャガイモの収穫はまだこれからだけど、
スイートコーンの出荷も始まったし、トマトや胡瓜は最盛期。
早朝から日が暮れるまで畑の中で忙しく働いている。
今も土汚れの付いた作業着姿で、タオルで汗を拭きながら来てくれた。
大樹には感謝してる…
改まってお礼なんて、お互い照れるから言えないけど。
大樹がドリンクの補充をしてくれている間に、売上計算を手早く終わらせ、分厚いファイルを閉じた。