ラベンダーと星空の約束
とにかく大樹と付き合っているとの誤解を解かないと、
「嘘つき」と言われ、信頼を損ねたままじゃ、明日からの仕事に差し支える。
手招きして彼を近くに呼び寄せる。
呼び寄せるついでに、暗くなったから店の明かりを点けて来てと頼むと、
途中まで歩み寄っていた彼は、ムスッとしながらも、素直に電気を点けに入口まで引き返してくれた。
大樹は面倒臭そうな顔をして、それでも帰らずにいてくれる。
それは有り難い。
怒っている様子の三浦君と、今二人切りにさせられるのは少しだけ怖いから。
どうせなら大樹も誤解だと説明してくれればいいけど、残念ながらその気配はなかった。
作業ズボンのポケットに両手を突っ込み、壁にもたれ、大樹は完全に傍観の姿勢をとっている。
三浦君が私の正面まで歩いて来るのを待ち、誤解だと説明した。
「あのね?大樹とは本当に付き合ってないから。
今はたまたま距離が近過ぎて、誤解させちゃったみたいだけど…」
「嘘だ!彼氏じゃないのにそんな、キ…キスしそうな距離で見つめ合うなんて有り得ない!」
有り得ないと言われても…
私と大樹にとっては、有り得る距離なんだよね。
怒っている様な、泣き出しそうな、悔しそうな、そんな顔を向ける三浦君。
「どうしよう」と言う視線を傍観している大樹に向けると、
「面倒くせ…」と呟きながらも、壁からゆるりと背を離した。
数歩歩いてきて、私の真後ろに立つ大樹。
私を挟み、二人が睨み合っている。
凄いね三浦君…
体格が良く目つきの鋭い大樹に睨まれたら、普通は後退ると思うけど、
若干ビビリながらも、何とか踏ん張って睨み返している。
退かない彼を見て、大樹が舌打ちするのが頭上から聞こえてきた。
その後、大樹の筋肉質の左腕が後ろから抱きしめる様に、私の体に回される。
「何で…?」と驚いていると、
今度はゴツイ右手が私の頬を握り潰す勢いで掴み、無理やり顔を右後方に向けられた。