ラベンダーと星空の約束
首が「グキッ」と確かに鳴った。
首の可動域の限界まで顔を後ろに向けられ
「何すんのよ!」と文句を言いたかったけど、驚いて言葉が出なかった。
だって、キスなんて有り得ないと思っていた大樹が…
何を血迷ったのか、唇を尖らせ、傾けた顔をゆっくりと近付けてきたから。
誤解を解こうとしている場面で、こいつは何の冗談を!?
驚きと焦りの中、顔はガッチリ掴まれ反らせないので、
体を大樹の方に捻り、左手で思いっ切りその頬をひっ叩いた。
「バチンッ」と大きな音が店内に響く。
それと同時に大樹が私を離した。
「痛ってぇ…
手加減無しかよ…」
「あ…あんた何やって…
ついに頭がおかしくなったの!?」
驚いたせいで、心臓がバクバク鳴っていた。
大樹は手の形に赤くなった右頬を、顔をしかめながら摩っている。
私達の様子を見ながら、三浦君は口をポカンと開けていたが…
「本当に付き合ってないのか…」とボソリ呟き、
すんなりと誤解は解けたみたい。
あ…そうか。
誤解を解く為、大樹はわざと私に叩かれる真似をしたのか。
それならそれで、何か合図してからやって欲しい。
本気で焦ったし、大樹の頭がおかしくなったのかと心配した。
「おい、俺とは付き合ってねぇけど、紫の事は諦めろ。
お前じゃこいつは落とせねぇよ。
大体お前、こいつの中身よく知らねーだろ?
好きだっつっても、どうせ、見た目だけなんじゃねーの?」
「違う!見た目はもちろん可愛くて大好きだけど、俺が一番好きなのは紫さんの優しさです!
すげぇ優しくしてくれて、天使みたいっす!」
「紫が天使…
おい、こいつ、お前の人物像激しく間違えてんぞ。
紫、何やった?
こいつだけ特別扱いしてんのか?」
「特別扱いなんてしてないよ。
うーん…私、何かしたかな?
全く思い当たらないけど…」