ラベンダーと星空の約束
「嘘だ、言ったよ!
うわぁ 大樹に初めて言われた!何かびっくり!
ねぇ私って可愛いの? 本当?
“可愛いね”って、東京流の挨拶じゃないの?」
『お前……めちゃくちゃ狙われてんじゃねぇかよ……
もっと自覚しろ。お前は隙だらけだ。
取りあえず部屋の鍵をあと10個増やせ』
「10個!?部屋の出入りにどんだけ時間掛かるのよ。アハハッうける〜!」
『笑い事じゃねぇ!』
この寮で気をつけるべきは大ちゃん…
変わってしまった今の流星だけ。
他の三人にそんな心配はいらないと思う。
万が一流星に襲われても、大声を出せばきっと誰かが助けてくれる。
大樹はやたらと焦っていたけど、私は何だかホッとしていた。
いつも一緒にいた幼なじみ。
慣れ親しんだその声を聞いている内に、
苦しかった心が少しずつ楽になってきた。
「大樹…電話くれてありがと。
明日は私から電話するね?声が聞きたいから…」
『何だよ…珍しいこと言うな……もうホームシックか?』
「ふふっ そんな所…」
『紫…あのさ……
流星は…? 流星にはもう会えたのか?』
「流星」の名前を出した時、大樹の声は少しだけ低かった。
電話の向こうから、何となく緊張している様子が伝わってくる。
『あいつ…紫のこと忘れてるよ…きっと』
合格発表の日に大樹は私にそう言った。
そんな事ないとあの時思ったけど、その予想は残念ながら的中していた。
私が無事に流星と再会出来たか、大樹も気掛かりだったんだ。
心配かけた分、大樹にはちゃんと報告しないと。
いや、聞いて欲しい…
一人では受け止め切れない辛い現実を。