ラベンダーと星空の約束
長い長いキスは、ラベンダー畑の消灯と共に、やっと終わりを迎えた。
ラベンダー畑に這わせてあるライトは、タイマー式で、午前2時に消える事になっている。
三回点滅した後、急に濃い闇に包まれた。
唇が離れ、至近距離にある筈の流星の顔が、暗過ぎて見えない。
一瞬不安になるが、夜闇の中で強く抱きしめてくれるから、流星は確かにここに居るんだと安心した。
柔らかい彼の髪が頬を撫でる。
うなじに掛かる熱い吐息が、少しくすぐったい。
「紫…俺…今、かなり危険な状態なんだけど…」
「そのようだね…」
キスの途中から、下腹部に感じていた固い感触は…
やっぱり、指輪ケースなんかじゃないよね……
「いい?」
「えっ…ここで!?」
「完全な暗闇だから大丈夫だよ。
観光客だってもう来ない。
それに家の中だと、君の両親が驚いて、起きてしまうかも知れない」
「驚くって…」
「4年分の想いを込めて、今夜は激しくならざるを得ない」
「………」
固い言葉と真面目な口調でそんなこと言われても、
「そうだね」と言えない……
それにもう2時を過ぎたから、そろそろ寝ないと明日…いや今日の仕事に差し支える。
私の背中を上下に移動していた流星の右手が、お尻の方へと下がって行く。
やばい…どうしよう…
流星の息子君が、元気を無くすにはどうしたら……
そう考えて閃(ヒラメ)いた。
「流星、うちのお父さんが…」
予想通りその言葉は効果を示し、彼の体がビクリと震えるのが伝わってきた。
お尻を撫でていた右手は止まり、うなじに掛かる吐息の温度が急降下する。
ゴクリと唾を飲み込む音も耳元に聴こえ、その後流星が恐る恐る聞き返した。