ラベンダーと星空の約束
「君のお父さんが…どうしたの…?」
「怒ってるよ、流星のこと。
私を溺愛してるからね。
『うちの娘を捨てるなんて許せん!』て言って怒ってた」
嘘は付いていない。
父が怒っているのは事実。
今でも酔うと必ず言われる言葉がある。
それは…
「大樹にしとけ、アイツは馬鹿でもお前を大事にしてくれるぞ?
大樹にならお前を嫁にやってもいい。隣だしな」
私と一緒に育ってきた大樹は、父にしたら息子も同然。
流星との付き合いを一度は認めてくれたけど、私が捨てられたと思っている今、大樹推しになるのは無理もない。
流星が帰って来たから結婚すると説明したら、父はどうするだろうか…?
一波乱ありそうな予感がする…
避けられない父と言う関門は、流星に頑張って貰うしかない。
「……… お義父さんには謝るよ…
誠意を込めて謝罪して、早く認めて貰える様にこれから努力を…」
「うちのお父さんも一応農家の男だから、言葉より手が先に出るタイプだよ。
大樹に負けないくらいに怪力だし、殴られる時は歯が折れない様に、食いしばっていてね」
「……… 殴られる前に止めてくれたりは…」
「しないよ。
大樹が流星を殴った事は納得いかないし、文句も言ったけど、父の立場としては道理だよね。
流星だってグチグチ言われ続けるより、一発殴られてすぐに和解出来た方がいいでしょ?
大丈夫、救急箱持って控えてるから。
バイ菌が入ったら大変、すぐに消毒しようね!」
「………」
下腹部に当たっていた固い感触が無事に消えた所で、流星の手を引いた。
「帰ろう。あれ?
そう言えば…荷物は?
手ぶらで帰って来た訳じゃないよね?」
暗闇の中、途中で何とかカメラを見つけ拾い上げ、自宅に向け歩いて行く。
父の恐怖について未(イマ)だ考え続けている流星、
私の質問にはちゃんと答えてくれる。
「荷物は大樹の部屋」
「大樹?何で?」
「昼間にこっちに着いていたんだ。
だけど君は忙しく働いている最中だと思ったし、取り合えず大樹の部屋に居させて貰った」
「あの散らかり放題の部屋に…」
「座るスペースもないから掃除した」