ラベンダーと星空の約束
「日焼け止めは塗ってる」
「それ、メイクに入んないから……」
スッピンが当たり前じゃないらしい。
よく見ると、この2人も他の子もメイクしてる子が多い。
やっぱり都会の子は美意識が高いと、感心していた。
今度瑞希君にメイクの仕方を教わろうかな?
男の子に教えてもらうのは変な気がするけど、
彼のメイクはナチュラルで上手だから。
今度は鈴木さんが私に聞いた。
「化粧水とか洗顔フォームは何使ってんの?」
「えーと、化粧水は“がごめ昆布”で洗顔フォームは“馬油”」
「…… は?
何それ…馬?昆布?
どこにそんなの売ってんの?」
「(うちの)土産物屋で普通に置いてるよ?
肌ツルツルになるから使ってみなよ」
「土産物屋って…
紫って変わってるよね。
スキンケア用品は、普通はそんな所で買わないよ?」
そう…だね…
鈴木さんに言われて初めて気付いた。
当たり前の様にうちの店の、お土産用スキンケア用品を使ってきたけど、
よく考えたら普通じゃない。
今まで普通だと思っていた事が決してそうではないと知り、“目から鱗”な気分だ。
極論かもしれないけど、
私は自分の事も世間の事も、何も知らない田舎者だと知る。
そういう意味では東京に来て良かったかも。
東京…勉強になります。
◇
真新しい教科書を開いてインクと紙の匂いを嗅ぐ時は、少しだけ心が浮き立つ。
蛍光ペンで文字をなぞる時も付箋を貼る時も、最初だけはドキドキする。
そんな新鮮な感覚を楽しみながら、午前中の授業を終えて昼休みに入った。