ラベンダーと星空の約束
 


山田さんと鈴木さんが中庭でお弁当を食べようと誘ってくれたけど、

学生食堂に行くつもりで、お弁当を持ってきていなかった。



二人と分かれ一人で食堂へ向かう。



一階の北側にある食堂は、物凄い人だかりだった。



余りの混雑振りに驚き、入口を通ることも出来ずに立ち尽くしていると、

急に誰かが背中に抱きついてきた。




「ゆかりちゃん見っけー!

そんなとこに突っ立ってどうした?

早く食券買わないと、人気の定食売り切れちゃうよ?」



「あ…流星…
食堂って、いつもこんなに混んでるの?」



「そうだよん。
もしかして人混み苦手な感じ?」



「うん…すごい人だね…足がすくんじゃう。
空いた頃に出直して来ようかな…」





流星に聞かれた通り、人混みは苦手だった。


初めて東京に来た受験の日、
どこもかしこも人だらけで、人酔いしたのを覚えている。



こういうのに慣れないといけないのだろうけど…

人を掻き分けて、食券を買う気力はなかった。



明日からはおにぎりでも握ってこようかな…

目の前の光景に怯みそう考えていると、
私の背を抱きしめたままの流星が、斜め後ろから顔を覗き込んできた。




「食券買って来てあげるよ。何がいい?オススメはA定食だけど」



「じゃあ…A定食お願いします」



「了ー解!」




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