ビターオレンジ。
下駄箱まで着くと誰もいず、シーンとしていた。
その静けさが嫌で慌てて外へとび出す。
冬には似つかない暖かさだった。
それから今度はとぼとぼと地面のコンクリートを見ながら歩いて、やっぱり短い時間でついた本宮君の家。
だって学校の近くだし…。
当たり前だけど…。
家を目の前にして震える手足は何故だろうか。
わからないけど、取り敢えず伝えたい事をメモ帳に1ページずつ別けながら書いていく。
ガチャンッ…
聞こえた音に反応しビクッと揺れた体。
背中に感じる視線。
物凄く知らないフリをして帰りたい。
冷や汗が背中に流れドクドクと早くなる鼓動。
「何やってんの。」
酷く冷たい声。
初めて聞いたその声に思わず振り返った。
「誰?その子。」
「隣の家の奴。」
本当に早く帰った方が良かったのかもしれない。
こんな現実は見たくなかった。
ずっと傍にいて、ずっと一緒にいて。
ずっと隣で笑っていてくれると思ってたのに。
それは間違ってると本宮君には本宮君の付き合いがあって、自分の世界がある。
そうやって現実を突きつけられた気がしたから。
私より何歳か年上の綺麗な女の子。
腕を組んで密着した二人の身体。
あぁ。もう嫌だ。
固まって動かなくなった足。
ギュッと握り締めた今日渡しにきた物。
伝えたい事は書いたんだ。
だから、あとは見せればいいだけ。
それだけ。なのに、なのに出来なくて…段々と悔しさが湧いてくる。
「用があるなら話せば?こらから私と彼方デートなの。ねぇ?」