【完】小さなしあわせ、重ねよう。


しばらくして畑辺が風呂から上がってきた。

もう年明けまで5分をきっていた。


「もう年が明けるんだねー」


さっきは向かい合うように座っていたのに、今度は横に座ってきた。

ほんのり甘いシャンプーの香りがする。


「…シャンプー、畑辺の?」


畑辺の話を思いっきり無視して、思ったことを口にした。


「え?…あぁ、うん。」

「ふーん?」

「きゃっ」


思わず抱き締めてしまった。


…いい香り。
ほのかに甘いところが畑辺っぽくて合ってる。

どうやら、脇腹辺りに手が当たったのがくすぐったかったようで、


「もー、くすぐったいよぉ」


笑いながらそう言い、
もう年明けちゃうよっ、
とテレビに映る芸能人たちがカウントダウンをしているのを見て言う。


そして、『ゼロ~!!』と言う彼らの声が部屋に静かに響いた。


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