【完】小さなしあわせ、重ねよう。


長蛇の列に並んで、やっとのことで賽銭箱の前まできた。


カコンッ


賽銭を投げ入れ、二礼二拍手し、
目を閉じて去年の感謝や願い事を神様に伝える。

そして、ゆっくりと目を開け、隣を見た。

畑辺はまだ願い事をしているようだ。

数秒して目が開き、また手を握って、邪魔にならないように賽銭箱から離れた。


「ねぇ」

「…ん?」

「どんなお願い事したの?」


俺が聞きたかったことを訊かれた。

わざと、


「…さぁ?」


笑ってほのめかした。

…てか、言えるかよ。"今年からは畑辺が幸せだと思える年にするので応援よろしくお願いします"

って伝えたなんて...


えぇ~ケチー、なんて言いながら口を尖らせているのに、満点の笑顔。


「お・し・え・ろ~っ!!!」

「うわぁっ!ちょっ、くすぐったっ!!」


いきなり脇腹をくすぐられる。

…俺、脇腹だけはっダメなんだけどっ...


「くくっ...あははっ...分かったっ!ギブ!!言うから」

「イェーイ!」

「ここじゃ、あれだから帰ってからね」

「うん♪」


また手を繋いで家へと帰った。

手の中に感じる畑辺の寒さで冷えきっている手の感触を感じながら...


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