【完】小さなしあわせ、重ねよう。


…畑辺を連れてね。


「あ、そういえばね」


さっき浮かべた涙を指で掬いながら言う畑辺。


「うん」

「明後日実家に帰ろうと思ってるの」

「うん、行っておいでよ」


実家に帰るのも正月行事の一つだろう。

と一人納得していると、


「でね...その~」


言いにくそうな照れくさそうな顔をしている。


「親が田邊くんを連れて来いって...」

「いいよ。一緒に行くよ」

「えっ!?あっさりっ」


なんだ、よかった。
病気で死にそうだから助けて、とか言われるのかと思った。

行くぐらいならどうってことないし。

第一、


「前々から挨拶くらいしておきたいと思っていたんだよ。丁度よかった。」

「で、でもっ!この歳になってから挨拶するってことは…」

「わかってるよ。それとも畑辺は俺とずっと一緒は...イヤ?」


21にもなって相手のご両親に挨拶しに行くってことは、結婚を考えての付き合いをしているってことを知らせにいくようなもの。

そんな事はとっくの昔にわかってる。
だから、俺自身はそういう気持ちで畑辺と付き合っている。
畑辺は違うのだろうか。



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