【完】小さなしあわせ、重ねよう。


そうやって考え込んでいる内に時間が過ぎてしまったので、後は急いで済ませて風呂を上がった。


「へぇ、今日は肉じゃがなんだ」

「うん、どうかした?」

「シチューの次に好き」


そう言いながら畑辺の背中に抱きつく。


「そうだったんだー!…ねぇ、最近ベッタリだね?」

「…イヤ?」


俺はズルイ訊き方をする。

そう言えば畑辺がイヤとは言えないことを知ってる。

正直でいて欲しいけれど、面と向かってイヤと言われるのはきっとかなり痛い。


「ううん」

「…本当に?」


コクンと頷く畑辺。

小さい子がするようなそのしぐさが可愛くて、堪らなく愛しい。


「だって、好きってずーっと言われてるみたいで幸せだもん」

「えみ...」

「えっ...なまえっ」


名前を呼ばれて動揺している。

そんな彼女の耳元に口を寄せ、
甘くて低い声で囁く。


「俺は"えみを愛してる"って伝えてるんだけど...?」



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