【完】小さなしあわせ、重ねよう。
「田邊くん...」
「ちがう、慶起」
名前で呼べと言ってみる。
そうすれば案の定、
「よ、しきっ」
真っ赤な顔して詰まらせながら呼んでくれる。
かわいい…。
上原さんのアドバイスのおかげでいいもの見れた。
今度お礼言っとかなきゃな。
幸せいっぱいで抱き締めていると、
沸々と何かが煮えたぎる音が聴こえてきた。
「あ、えみ、肉じゃが」
「えっ?!あ...慶起のバカァ...なんてねっ」
イタズラッ子のようにベーっと舌を出して笑う仕草も、俺の心を鷲掴みする。
…バカはお前だよ。
「なぁ、」
「んー?なにー?」
背中越しの上機嫌な声。
その声はきっと次の一言で一変するはずだ。
耳元でまた低い声で囁いた。
「…えみを食べたい」
「っ?!♀♂¥%&▲○」
…数十分後。
疲れたようにぐったりと、
でも幸せそうに微笑んで、
俺の腕の中で眠っている笑美。
「頑張った、えらい」
ありがとうの意味を込めて、
額にかかった前髪をあげて額にキスをした。
それから、ひとの肌の温かさを感じていると、瞼がスッと重くなった。
…えみ、愛してる。