もう一度…。
「あんたねぇ!!」


都がものすごい勢いで矢島湊に詰め寄る。


「ゆりのこと何にも知らないくせに偉そうに。ゆりはっ――」

「都!」


わたしは慌てて引き留める。


「ちょっと、ゆり止めないでよ!
こんなやつ、ガツンと言ってやらないとわかんないんだよ!」

「だめだってば。」


ぐいっと都を引き戻す。


「矢島さん、何も知らないんだよ。」

「だからって、あんな言い方っ――」

「都。ただ一般論を言ってるだけだよ。そんなに怒ることじゃない。」


じっと都の目を見つめ、静かに諭す。
わたしの言葉で落ち着きを取り戻したのか、都はひとつ大きく息をはいた。


静まりかえり重くなった雰囲気を壊すように
わたしのスマートフォンが軽やかに音楽を奏でる。

画面に美緒の名前を見つけ、わたしはあわてて近藤君に都を託した。


「ごめっ、美緒から電話だから。あの、都怒ってて、とにかくごめん!
あとお願いする!」


電話を片手にわたしは店のロビーへと急いだ。

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