もう一度…。
「もう5年も前の事ですからね。そんなに悲観的なわけじゃないんですよ。」
わたしはまっすぐ前を見つめて言う。
「それでもやっぱり…。誰だっていろいろ事情があるのに、
あんな風に決めつけた発言してしまって、恥ずかしいです。」
「でもこうやって、ちゃんとお話ししてくれたじゃないですか。
それだけで充分です。それに……。」
「……??」
「正直言うとちょっとうれしかったんです。」
「うれしかったって何がですか?」
「矢島さんに母親としてどうなんだって責められたとき
なんかちょっとホッとしたんです。
わたし、そういう母親にみえるんだなぁって
……って、言ってること変ですかね。」
「…です、、かね。」
いまだ意味が掴み取れないという顔で彼がこちらを見ている。
「ずっと……普通の母親に戻りたかったんです。
主人が亡くなって、子供から離れられなくなってしまって…
でもたくさんの人に支えられて、
少しずつ子供と距離をおけるようになって、、、。」
彼はじっと黙ってわたしの話を聞いている。
「でも、いまだにちゃんと普通の母親になれてるのか不安なんです。
普通って何が普通なんだって感じなんですけど
……頑張って子育てして、子供が大好きだけど時にはイライラしちゃって自分の時間ほしいなって思ったり、
時には子育てから解放されて、のんびりしたいって思ったり…。
そういう――……」