もう一度…。
そう、ホントはずっと不安だった。
わたしはちゃんとできてるかなって。
美緒のこと苦しめてないかなって。
みんなは『大丈夫だよ』『普通だよ』って言ってくれるけど
ずっと心のどこかで疑ってた。

わたし、ちゃんと前に進めてる――??

ホントにちゃんと―――……


「ちゃんと普通のお母さんでしたよ。」


隣から優しい言葉が降ってくる。


「ちゃんと頑張って子育てして、
子供が大好きだけど時にはイライラしちゃって自分の時間ほしいなって思ったり
時には子育てから解放されて、のんびりしたいって思ったりしてそうな、
普通のお母さんでしたよ。」


驚いて彼を見たわたしに、彼はゆっくりゆっくり
まるでわたしに言い聞かせるように繰り返す。
優しく微笑む彼に、言葉が出ない。


「……――っ」


思わず涙がこぼれそうで慌てて下を向く。
言葉が体中に染み込んでいくような不思議な感覚に
わたしは胸がいっぱいになった。

ずっとずっと体の中に残っていた大きな塊が
すぅーっと溶けていくような気がして
彼の言葉を何度もかみしめながら顔を上げた。







「ありがとう。」







わたしの言葉に彼が小さく頷いた。







< 28 / 36 >

この作品をシェア

pagetop