初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
「…そろそろ帰ろうか」
「あ、うん…」
少し赤い頬を誤魔化すように、鞄を肩にかける絢星くん。
その背中を見つめて、急に切なくなる。
「…私の、だったらいいのに」
その背中も、その腕も。
それだけじゃなくて、その心も。
「…え、何か言った?」
「ううん、何でもない」
さよなら、したくないなぁ。
まだ、彼女でいたいなぁ。
冬花さんのものに、なってほしくないなぁ。
「あ、教室にケータイ忘れた。
ちょっと取ってくるから待ってて」
「わかった」
早足で教室に向かう絢星くんを見送って、保健室で待っていると。
「…あれ、夕陽ちゃん」
急にドアが開いて、入ってきたのは驚いた顔の伊織先輩だった。
「え、なんで…」
「ちょっとバンソーコー貰おうと思って…」