初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
「怪我、したんですか?」
「ああ、ちょっと切っただけだけど」
バンソーコーを渡すと、ありがとう、と笑う伊織先輩。
「…この前の、ことだけどさ」
少しの沈黙。破ったのは伊織先輩。
「単刀直入に聞くけど、泣いてたのって彼氏絡み?」
「……は、い」
「そっか…」
少し考え込むような伊織先輩の安心感に、無意識のうちに口を開いていた。
「…たぶん私のこと、好きじゃないです」
「え…」
「分かってたけど…知ってたけど…
でも私、どんどん欲張りになっちゃって…」
また泣きそうになるのを、黙って聞いててくれる。