初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
授業が始まっても、身体の右側に全ての神経が集中しているみたいにドキドキする。
ちょっと、見たいな、隣。
そう思うけど、やっぱり視線を向ける勇気が出ない。
視界の端っこに映るのは、どうしたって彼の左手だけで。
ああ、南雲くんって左利きなんだ。
左手で抱え込むように文字を書くその腕に、少し動いたら私の右腕が触れてしまいそうで。
きゅ、と少しだけ縮こまった身体。
この至近距離で横を見るなんて、明らかにおかしいって思われる。かもしれない。
南雲くんが私なんかの動きに気付いたら、だけど。
…気付かないかもしれないな。
それほど私のこと、気にしてないかもしれないな。
ちらっと、見るくらいなら。
よし、と意を決して、視界を少し左にずらす。
そこにあったのは綺麗な横顔で、だけど。
パッと振り向いた彼と、顔をそらす隙を与えられなかった私の視線はぶつかってしまった。