初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
驚いて目を丸くする私と、「え、本当にキスした?」って騒ぎ出すみんな。
そのまま南雲くんが放心する私をフォローしながら劇を終わらせて、そのまま私の腕を掴んで舞台裏から抜け出した。
「な、南雲く…」
白雪姫のドレスと王子様のスーツ。
そんな2人が校内を走っていれば目立たないはずがない。
通りかかる人みんなが振り返る恥ずかしさも、南雲くんの言葉に比べたらどうだってよかった。
ねえ、ねえ、南雲くん。
さっき、なんて言ったの。
「…っ、はぁ」
使われていない校舎の空き教室に入り、息を整える。
この心臓がドキドキうるさいのは、走ったせいだけじゃないんだろう。
離れた今もまだ残っている腕の温もりに、また泣きそうになった。