初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
15.大好きで仕方ない
「…」
「…」
沈黙。
ふたりきりの保健室には、私がペンを走らせる音と、時計の秒針の音だけが響く。
…だけど、今は気まずくない。
「絢星くん、何か喋って」
「…」
いつかの絢星くんと同じ無茶振りを、いたずら半分にしてみたのに。
読んでいた本から少し顔を上げたものの、何も言わずに私を見る絢星くん。
「…いつもと髪型、違うね」
やっと口を開いた絢星くんに、驚く。
たしかに今日はいつもおろしている髪をハーフアップにしてみた。
正式に絢星くんの彼女になってから、やっぱり少しでも可愛くなりたくて。
だけど絢星くんが気付いてくれてるなんて、思わなかった。
放課後まで何も言われなかったし、絢星くんがそんなことに気付くタイプには思えないし。
予想外の嬉しさに戸惑っていると、
「…可愛いんじゃない」
少し目をそらして小さな声で続けるから、胸がぎゅうっと温かくなった。