初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
「…特に、何も…」
そう呟くと、一瞬歩みを緩めた南雲くんは、なにか言いかけて、やめた。
再び訪れた沈黙は、初めて保健室でふたりきりになった時のそれとは違って。
気まずくなくて、嫌じゃなくて。
この空気は好きかもしれない。
あっという間に着いた私の家。
おやすみ、と背を向ける南雲くんの背中に、口を開く。
「…南雲くんのこと、だよ」
振り返った南雲くん。
「…南雲くんのこと、話してたよ」
それだけ言うと、パッと下を向いた南雲くん。
「…そっか」
それだけ言ってまた背を向けた南雲くんの頬が赤いように見えたのは、街灯のせいか、それともー…。