初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
「あれ、まだ残ってたんだ」
「あ…うん、」
火曜日の放課後。
私は来室記録をまとめるために、また保健室にいた。
ガラリと開いたドアから入ってきた南雲くんは、天文部の次回の天体観測会に関する話し合いがあったらしい。
「…部活、終わったの?」
「うん」
そっけない返事にはそろそろ慣れてきたけれど、その後どうやって会話を続けたらいいのか分からない。
…嘘、やっぱり慣れてないかも。
初めよりは怖くなくなったけど、それでも不機嫌なのかな、って少し怖くなる。
何も言わずに私の前の椅子に座った南雲くんは、鞄から文庫本を取り出して読み始める。
……いつも、なに読んでるんだろう。
気になるけど、静かすぎるこの空間で言葉を発するのは躊躇われた。