初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
「読……む、こともあるよ」
…うそ、ではないよね?
たまーには読むよね?
「へえ、どんなの読むの?」
少し驚いて、聞いてくる南雲くん。
興味を持ってもらえるのは嬉しいけど、この話題は深く聞かないでほしい…。
「え、と……恋愛小説とか…?」
正直に答えてしまってから、あっと後悔したけれど遅い。
南雲くんが唯一読まなそうなジャンルだ…。
だけど私が唯一読むのは恋愛小説。
バカにされる、と思ったのに。
「今度オススメ教えてよ」
「えっ……南雲くんって恋愛小説とか読むの…?」
「あんまり読まないけど」
「じゃあなんで…」
首をひねると、南雲くんは眼鏡の奥の瞳で私を捉えて。
「北山さんが好きなもの、興味ある」
なんて無表情のままで言ってくれるから。
思わず私の方から目をそらしてしまった。